「ピースサイン」と「2個ください」のときの指の形のように紛らわしいものが、ときとして大きな悲劇を招くことがある。私の友人に起きたできごとだ。
中年男性の彼は、同僚と電車に乗っていたのだった。職場の飲み会の後だったので、2人とも良い気分でおしゃべりしていた。いろいろな話題が出たが、韓国のドラマの話と k-pop の話から、ハートマークのジャスチャーの話になった。これにはいろいろな方法があるのだ。
もっともポピュラーなのが人差し指と親指を交差させるポーズだ。同じくらい有名なのが、両手の人差し指と親指、あるいは中指と人差し指の先をくっつけてハートを作るやり方だ。
また、片手でハートマークの半分を作り、自分の頬にくっつけてハートマークを完成させるのもある。これをするのはおもに歌手で、マイクを持っているため片手でしかハートを作れないのである。変わったものに、両腕を肘で接触させ、丸めた両手の先をくっつける方法がある。これで細長いハートができるが、体が硬いと難しい。
同僚が言った。「ほかにありましたかね……」 そのとき、友人はもうひとつ思い出した。「あるある、これ」
友人は両手の先を頭の上につけ、両腕を大きく丸め、大きなハートマークを作った。だが、その瞬間、彼は自分のしていることが恥ずかしくなった。そこで照れ隠しにこう言った。
「なんちゃってね」
ガラにもなくやってしまいました、という意味だったが、その瞬間、電車の乗客たちがいっせいに友人のほうを見つめたのだ。何人かは大慌てで彼に携帯を向け、撮影を始めた。彼は困惑し、両手を下ろし、うつむくと、次の駅で同僚と一緒に逃げるように降車したのだった。
そして、翌日、友人は同僚から驚くべき知らせを受け取った。自分の写真と映像が SNS で拡散されているというのだ。慌てて見ると、こんなコメントが付けられていた。
「現代のなんちゃっておじさん現る」
これがきっかけとなって、なんちゃっておじさんの目撃が都内で相次ぎ、「第2次ブーム」が到来した。