僕らの町に被害者がやってきた。そりゃもう大歓迎だ。なにしろとてもひどい目にあった人だ。手を差し伸べないなんてどうかしてるよ。
それにしてもなんてかわいそうな人だろうか。僕らは自分の持てるものを持ち寄って被害者を支えることにしたんだ。
寺に使っていない納戸があるから、そこに住んでもらおう。僕らは蜘蛛の巣を払って、埃をこすり落とした。それからなんといっても食べ物だ。ちょうど倉庫に古米・古古米・備蓄米が余ってる。これをあげよう。
服も必要だ。僕らは町の人々に声をかけて古着を集めた。あっというまに段ボール箱に20箱。被害者は大喜びだ。
仕事は……というと、ちょうど草むしりの仕事がある。誰もやりたがらないけど、被害者の憂さ晴らしにはぴったりじゃないか……。
そして、2週間ほど経ったとき、とんでもない事実が明らかになった。
あの被害者、僕らのあげたお米や古着をネットで売って金儲けしてたんだ。被害者め、売り払って得た金で、新しい服を買っていたのだ。新米を食べていたのだ。肉なんか食べていたのだ。寺に厄介になっているというのに!
もうみんなカンカンだ。「被害者のくせに!」「金目当てだった!」「騙された!」「被害者なんかじゃなかった!」「ペテン師だ!」
被害者はせめて被害者らしくしてなきゃ。そもそも、こんなんだから被害者になったんじゃないか。
いい気味だ。