私たちの町の広場に見知らぬ人が現れた。一日中、広場のベンチに座っている。夜はどうするかというと、そのベンチで寝るのだ。食べ物はどこからかかき集めてくるらしい。こそこそと誰にも見られないように食べていた。
広場に住み着いてから三日ほどした後、私たちはこのよそ者が倒れているのを見つけた。苦しそうに喘いでいる。
私たちは遠巻きにしながら様子を見ていた。誰かが「なんとかしてやれよ」と言った。すると別の声が答えた。「そうだ。行政は何をやっているんだ」
よそ者はなおも苦しそうにしながら、私たちのほうに顔を向けた。掠れる声で「水……水……」というのが聞こえた。
誰かがまた言った。「なんとかしてやれよ」 別の声が苦々しげに答えた。「まったくだ。日ごろうろちょろしている活動家たちはなんで放っておくのか」
よそ者は苦悶に満ちた顔を空に向けた。そして、地響きなような唸り声を上げると、それきりもう動かなくなった。
誰かが憤りの声を上げた。「行政が見殺しにしたのだ!」 別の者は 「活動家どもってのは口先ばかりで頼りにならんな」と呆れてみせた。
そして、私たちは、社会的弱者に気づけてやれた自分たちに満足しながら、広場から散っていった。