私は孤独な人間が大きらいだ。なぜなら、孤独な人間は犯罪者だからだ。
孤独な人間は、私たちの社会に対し理不尽な怒りを燃やし、恐ろしい犯罪を犯す。
放火、刺殺、通り魔、毒のばら撒き、わいせつ、大量虐殺、虐待……孤独な人間は、いつ爆発するかわからない爆弾なのだ。
政府は孤独な人間を隔離すべきだと思う。だが、人権派どもがいらぬ邪魔立てばかりする。ならば自分の身は自分で守らねばならない。
だから、私は孤独な人間を見かけるとすぐに遠ざかる。いつグサリとやられるか知れたもんじゃないからだ。
だが、よくみれば、孤独な人間がうようよしているのだ。これだけの害虫どもがもしいっせいに暴発したら? しめしあわせて? 逃げ場なんてない。どうすればいい?
私は考えに考え、ついに最善の解決策を見出した。私自身が孤独な人間になりきるのだ。もうこれ以上ないくらい孤独で、みすぼらしく、まさに誰も近寄らないような人間を演じるのだ。
そうすれば孤独な人間たちは、「このリア充め!」と振りかざしたナイフを、たちまち私から反らせ、別の人に向ける。ぶっかけようとしたガソリンも、私には一滴だって降りかからない。それどころか、「下には下がおるわい」とご満悦、缶コーヒーの一本でもくれるかもしれない。これだ、これなのだ。
私は今、孤独な人間のように暮らしている。どこに行くのもひとり。食べるのも飲むのもひとり。いつもぶつぶつ独り言。だが、これはふりをしているに過ぎないのだ。本当は孤独ではない。友達もたくさんいる。携帯のメッセージも読みきれないくらい。ただ、孤独な人間をだまし、その憎悪をかわすために、孤独の扮装をしているだけだ。
ぜったいに私は孤独ではない。本当に本当だ……