先日、出先で昼を迎えることになった。家で食べるほうが安心だったが、しかたなく大手チェーンの回転寿司に入った。
入ると、ガイド役の機械が待ちかまえていた。指示されるままにその画面をタッチすると、カウンター席の番号が書かれた紙が出てきた。
そこで食べろというのだ。カウンター席はひとりひとり仕切られている。私たちは食べるときはひとりでなくてはならない。寿司のレーンは上下2本あり、下のレーンを絶えず寿司が流れていく。どの寿司も大きな透明な殻に入れられている。
レーンの上にモニターがあり、そこから注文することができる。マグロを注文し、しばらく待つと「注文した商品が到着します」と音声が流れた。皿が上のレーンを流れてくる。私は緊張しながら速やかに皿を取った。わずかな遅滞が命取りになるかもしれないからだ。
醤油差しは仕切りの下の台に置かれている。醤油皿はない。私は慎重にこれを取り上げた。そして、余計な誤解を招かないよう自分の顔から十分離して寿司の上に持っていき、数滴だけふりかけた(かけすぎるのも危険だ)。そして、寿司を素早く口に放り込んだ。
空いた皿を醤油皿として使っていいものか迷ったが、確信が持てず結局やめた。醤油差しの置かれている台にガリの入った容器も置かれていたが、難易度が高そうなのでこれも諦めた。
私は結局、4皿ほど食べて終わりにした。もう限界だった。何もかもがトラップのように感じられた。
会計をセルフレジでしていると、人間の店員が私に声をかけてきた。食べ終わった皿をテーブルの片隅にある回収口に入れていなかったというのだ。
「しまった、ついに引っかかった」と私はとりみだしたが、店の人が代わりにやっておいてくれたというので安心した。さもなければ、別室に連行されていたかもしれない。
私は命拾いしたことにつくづく感謝しながら、「Big Brother is watching you」と記されたレシートをポケットに押し込みながら店を出た。