苦い文学

選ばれ〜る

私は今、求職中だ。

実際のところ、履歴書をゆうに 100 通以上は送ったが、梨の礫だ。どうにかして、書類審査を通過して、面接にまでこぎつけたい。そのためには、選ばれる履歴書を書かなくてはならない。

だが、選ばれる履歴書とはなんだろうか。私はあらゆる履歴書の文例を参考にし、どこに出しても恥ずかしくない履歴書を完成させた。だが、この、よもや落とされまいというものが落とされるのだ。

もしかしたら何かが足りないのではないか……審査側が選ぼうという気になるような要素が。

今日、そんなことを考えながら、散歩に出た。そして、喉が渇いたので自販機でお茶を買ったとき、気がついた。

そういえば私の履歴書には「〜」がない、と。

どういうことかというと、お茶を買おうと自販機に向き合ったとき、私はそこに「つめた〜い」「あたたか〜い」と書かれているのを目にしたのだ。

私たちが自販機の前に立ち、この「つめた〜い」「あたたか〜い」を見るとき、飲み物を買おうと選ぶ気満々だ。つまり「〜」と「選びたい気持ち」の連合が私たちの心理において生じているのだ。この経験が繰り返されると、この連合はますます強化されていく。

その結果、どうなるかというと、私たちは「〜」を見ただけでもう選びたくなってしまう。「〜」が刺激となって「選びたい気持ち」を喚起しているのだ。

ならば、履歴書の文言のあちこちに「〜」をさりげなく紛れ込ませれば、この「〜」がトリガーとなって、審査側の「選びたい気持ち」を呼び起こすこと疑いなしではないか。これぞまさに「選ばれる履歴書」いや「選ばれ〜る履歴書」だ。

私は急いで帰宅すると夜を徹して履歴書の修正を行い、先ほど完成したばかりだ。

近いうちにみなさんに、明る〜いお知らせをお伝〜えした〜い。