苦い文学

万引き

お店に入って商品を選び、小脇に挟んで別の商品を探すが、気に入ったものがないので、そのままお店を出てしまうことがある。

このとき、小脇に挟んだ商品のことはすっかり忘れているのだ。店から一歩二歩踏みだしたとたんに、あっと気がついて慌てて戻ることとなる。

下手をすれば万引きになるところだが、興味深いのは、店の人も、そして、おそらくは店内のどこかで目を光らせているに違いない万引きGメンも、これに気がつかないことだ。

おそらく万引きをした人はその態度に不審な点がどこかしら現れるもので、それは経験を積んだ店員や警備員にはかなりはっきり見えるのだろう。だが、私のように自分が万引きしつつあることに気がついていない場合は、そうした手がかりがないため、たとえ未精算の商品が脇に挟まれていたとしても、うっかり見過ごされてしまうということになる。

となると、自分の意識をコントロールして、自分が万引きをしているということに気がつかない状態に持っていくことができれば、どんな万引きも可能になるのではないだろうか。

私がメディテーションの修行に打ち込むようになったのもこうした理由からだ。いずれ、万引き自由自在の術を身につけ、カーディーラーから新車をごっそり万引きしてみたいと思っている。