いつの頃からかわかりませんが、電車で座る私の隣に人が来ないようになりました。
私の両隣には誰も座らないのです。いや、もちろん、混んでくると誰かが座ってくれます。ですが、それは他の席がすべて埋まってからなのです。
これに気がついたとき、私は自分の身なりや体臭が人を遠ざけているのではないかと思いました。それで、できるだけ小ぎれいな服を着て、体もよく洗うようにしました。歯もしっかり磨いて、うがいもしました。だが、それでも私の隣は空いたままなのでした。
そればかりではありません。私が座ると、隣に座っていた人がすっと立ち上がって、ドアの前や、隣の車両に行くようになったのです。私はショックを受け、怒りすら覚えました。侮辱されたように感じました。
ある時などは、私から逃げた人を隣の車両まで追いかけていったこともあります。わざとその人の隣に座ってやったのです。その人はすぐさま姿を消して、ちょうど停車した駅で降りてしまいました。
とことんまで追い詰める気だったので、本当に腹立たしかったですが、これで良かったのです。というのも、もしそのまま追いかけ続けていたら、どこかで警察に呼び止められていたでしょうから。
今では、私は座りません。電車の中では、どんなに空いていようと、吊り革にぶら下がったり、ドアの脇に寄りかかったりしています。
私は、自分の隣から逃げていく人々に申し訳なさを感じるようになったのです。そのような状況に追いやってしまって、かわいそうなことをした、そんなふうにも思っています。
結局のところ、理由は不明ながら、私は人々を苦しめていたのです。
せめて、というわけではないのですが、みなさんにお願いがあります。電車で席に座るとき、私のような人間がいるということを、ちょっとだけでも思い出してください。それだけで十分です。