苦い文学

悲しい物語

つい最近、日本での在留を認められた人が、こんな話をしてくれた。


私の国はとてもひどい。政府が国民をいじめる。弱いものいじめね。みんななにも言えない。我慢して頭を引っ込めてる。政府が怖い。でも、私は怒ったよ。いじめるのをやめなきゃだめ。私は政府に反対の活動はじめた。

そしたら、警察に捕まった。刑務所に入った。2年。出たとき、もうこの国あぶないから、逃げた。それで日本に来た。

日本に来たら、私の国の人たちたくさんいる。みんな困ってる。だから、私、助けた。がんばった。みんな難民申請するの助けた。でも、自分はしなかった。準備してたら、捕まって入管に入った。

品川の入管。海の近くにあるでしょ。

はじめの入管は3年。それから仮放免。そのときもみんな助けた。また入管に入って2年。その後は長崎の入管に3年入った。

みんなどんどんビザもらった。けど、私だけくれなかった。どうしてかな?

最近、ビザくれた。15年かかった。あっという間。夢みたい。でも、どうして私だけくれなかった? 理由わからない。みんなはもっと前にビザもらって、仕事して、結婚して、いい生活している。

でも、私なんにもないよ。

もうどこにも私の知っている人いない。あんなに助けたのに、私ひとりだけ。お金も仕事もない。若くもない。

もうおじいさんだよ。


この悲しい物語を、私は「浦島太郎」として語り継いでいきたい。