苦い文学

ギターの力(4)

ギターのストロークはもはや目に見えないほどの速さに達していた。その激しい演奏とともに若者たちの歌声とも叫びともつかぬ声が反復しながら続いていた。手を繋ぎ、抱き合っていた男女たちは、再びひとりに戻って、頭を振り、手を振り上げていた。

助手が博士に叫んだ。「危険域に達しています! 直ちに介入すべきです!」

「やむない!」と博士は苦渋の決断をすると、会場の人々に向いて厳しい顔で語った。

「少し予期せぬ事態が起きましたが、まもなく元どおりになります」

だが、そのとき、会場から悲鳴が上がった。モニターの中で、ギターを若者から奪おうとした助手が弾き飛ばされたのだ。博士は振り向いてモニターを見た。いまやギターは暴走を始め、若者たちを恐ろしい歌の世界に引きずり込もうとしていた。

ギターの恐ろしい轟音が、若者たちの口から狂った歌を生み出した。

「人間なんてラララーララララーララ、人間なんてラララーララララーララ、人間なんてラララーララララーララ」

博士は飛び上がった。「いかん、ジャンボリー化が始まった! こうなったらもう止める手立てはない! みなさん、ただちに退避してください!」

凄まじい叫びと混乱が始まったが、博士はそれにかまわず壇上を去り、地下通路を通って、キャンプ場に走った。

助手がすがりつく。「博士! 危険です! もう私たちには手が負えません」

「弦を切ればなんとかなるかもしれん!」

「ですが、それでは博士の命が!」

「この力を目覚めさせた者が責任を取らねばならぬのだ!」

博士はニッパーを片手に若者たちの輪の中に飛び込み。ギターに手をかけ、弦を切った。閃光が走る。そして、巨大な光が生じ、すべてを飲み込んでいった。

光が消え去った後に残されたのは、一面の焼け野原。そこをさまよう人々は、どこかで「禁断の遊び」が鳴り響いているのを聞いたような気がした。