苦い文学

ギターの力(3)

若者の輪の中に歌本が投げ込まれるや、たちまちギターがかき鳴らされ、歌が生じた。

あいまいな歌声はギターの演奏に合わせて、少しずつ形をとり、同時に、若者たちの間に広がっていった。そして、すべての若者が声を合わせて歌い出した。

「あの素晴らしい愛をもう一度!」

さらに歌は続いた。

「てんとう虫がしゃしゃり出て! サンバに合わせて踊り出す!」

モニターを見つめる人々は、オスの個体とメスの個体とが見つめ合ったり、指を絡ませたりしているのを目撃した。ギターの音はますます大きくなった。

「この大空に! 翼を広げ、飛んで行きたいよ!」

あちこちにつがいが形成され、それぞれ身を寄せ合い、抱き合っていた。

「あともう少しです!」 博士は興奮して聴衆に向かって叫んだ。

ギターの音はますます激しくなった。演奏している若者は顔を歪め、全身を震わせていた。

「戦争を知らない、子供たちさ!」

助手が博士に報告した。「ギターの熱量が上がり続けています!」

博士は叫んだ。「いい、このまま行くのだ!」

「しかし、このままでは!」

「もうすぐ若者たちの間に恋愛が成就するのだ!」

ギターの咆哮とともに、耳をつんざくような若者たちの叫び声が響き渡った。

「天国よいとこ一度はおいで!」

人々は耳を塞ぎ、不吉な予感におののくばかりであった。