若者の輪の中に歌本が投げ込まれるや、たちまちギターがかき鳴らされ、歌が生じた。
あいまいな歌声はギターの演奏に合わせて、少しずつ形をとり、同時に、若者たちの間に広がっていった。そして、すべての若者が声を合わせて歌い出した。
「あの素晴らしい愛をもう一度!」
さらに歌は続いた。
「てんとう虫がしゃしゃり出て! サンバに合わせて踊り出す!」
モニターを見つめる人々は、オスの個体とメスの個体とが見つめ合ったり、指を絡ませたりしているのを目撃した。ギターの音はますます大きくなった。
「この大空に! 翼を広げ、飛んで行きたいよ!」
あちこちにつがいが形成され、それぞれ身を寄せ合い、抱き合っていた。
「あともう少しです!」 博士は興奮して聴衆に向かって叫んだ。
ギターの音はますます激しくなった。演奏している若者は顔を歪め、全身を震わせていた。
「戦争を知らない、子供たちさ!」
助手が博士に報告した。「ギターの熱量が上がり続けています!」
博士は叫んだ。「いい、このまま行くのだ!」
「しかし、このままでは!」
「もうすぐ若者たちの間に恋愛が成就するのだ!」
ギターの咆哮とともに、耳をつんざくような若者たちの叫び声が響き渡った。
「天国よいとこ一度はおいで!」
人々は耳を塞ぎ、不吉な予感におののくばかりであった。