私は最初マイナンバーカードには反対だった。だが、カードを新規登録するとポイントがもらえると聞いてから、考えが変わった。
最初は 5,000 ポイントだった。だが、国民の反応が鈍いと見るや、政府は 20,000 ポイントに引き上げた。すると、一気に申請率が上がり、全国民の7割を超えた。
しかし、我が国の政府は7割程度では満足しない。「やるからには全員」そんな決意を込めて、一気に 30,000 ポイント上乗せした。
ところが、意に反して、申請数はさっぱり上がらなかった。というのも、みんなもっと上がるにちがいないと考えていたのだ。
そして、この日から、私たちと政府との根比べが始まった。政府はポイントをどんどん釣り上げていく。60,000、70,000, 80,000, 85,000……。
これに私たちの仲間は次々と脱落していった。「ダメだ! もっと上がる! 全国民の99,9 パーセントが持つまで耐え抜くんだ!」 だが、彼らはこう考えたのだ。「政府はもう明日にでもポイントを止めることだってできるのだ。今しかない!」
私たちだってその恐れとは無縁ではなかった。だからこそ、あらゆる情報を漁り、裏のルートを使って政府内部の動向を探り、綿密な情報分析を行ってきたのだ。まだ……まだまだだ……もっと上がる!
そして、今、新規登録のポイントは 56 億にまで跳ね上がっている。だが、私たちはまだ動かない。
というのも、極秘情報によると、政府は、本来は人材派遣企業や広告代理店の懐を潤す予定だったお金すらかき集め、ポイント予算の残り全額をかけて、未申請者一掃を目論んでいるというのだ!
私たちは、政府をそこまで追い詰めたことに満足するとともに、この国から最後の1ポイントまで搾り取ってやる覚悟だ。