苦い文学

下を向いて歩こう

最近、首を痛めて、うつむいてしか歩けない。もう前なんか向けない。見上げるなんてとてもとても。

そんなふうに下を見ながら歩いていると、世の中には、「前を向こう」「上を向いて歩こう」「空を見上げよう」「仰げば尊し」など、前や上についてのメッセージで溢れていることに気づかされる。

「下を向こう」などという歌はないのだ。前を向いたり見上げたりではなく、うつむくことを応援する歌がもっとあってもいいはずだ。

確かに「上を向いて歩こう」のころの日本は高度成長期で、涙をこらえて我慢することが美徳だった。なぜなら、そうすればいつかは良い暮らしが待っていたから。だが、もはやそんな時代は終わった。

いまやこの日本にふさわしいのは、下を向きながら思い切り涙を流すことだ。上を見て涙がこぼれないようにするなどバカげている、そんな時代になったのだ。

私たちはもはや無理をして前を向いたり、上を向く必要はない。下さえ見られれば十分だ。私はうつむきながら決心した。そうだ、日本中のだれもが、安心して下を見ていられる社会を作りたい、と。

そんな社会の実現のため、私はしっかりと下を見すえて歩きはじめた。私の活動に関心を持った方は、ぜひ下向きに検討をお願いしたい。