インターフォンが鳴った。帽子を被った配送員の姿がインターフォンの画面に映し出される。片手に箱を抱えている。スピーカーのスイッチを押すと「お届けでーす」と声がし、私は玄関に向かった。
ドアを開ける。配送員は私にいつもの Amazon の箱を渡すと何も言わず立ち去っていった。箱はたいして大きくない。縦横 40 センチ、幅 15 センチぐらい。そして、軽かった。
私は箱をそっと机の上に置いた。見るかぎり、どこにも傷はない。へこんでもいない。キレイな箱であることを確認すると、私は開封に取り掛かった。箱に貼られたテープを丁寧に剥がす。箱の閉じ目が露わになる。はやる気持ちを抑えながらゆっくりと左右に開く。緩衝材がわりの紙屑でいっぱいだ。紙屑をひとつひとつ慎重に取り除く。じわじわと興奮が高まっていき、その絶頂で、私は箱の中に何もないことを確認した。
ついに配送は完了されたのだ!
こんな純粋なものがこの世にあろうとは! 興奮冷めやらぬまま、私はパソコンで、Amazon のサイトを開き、「配送」のカスタマーレビューに書き込んだ。
「注文後すぐに到着しました。丁寧な包装もグー。」(星5)
ああ、自分がこんなことをするなど、夢にも思わなかった!