苦い文学

異国のシャワー

私たちは異国の安宿のシャワーで忍耐を学ぶ。

栓をひねればお湯も水もちゃんと出て、水量も十分というのが一番いいが、そんなことはめったにない。だから忍耐が必要だ。

あるホテルのシャワーでは、お湯の栓をひねると水が出て、お湯になるまで時間がかかる。しばらくは冷たい水しか出ない。出しっぱなしにして手を突っ込むと暖かくなったように感じる。よし、とシャワーに飛び込むが、やっぱり冷たい。期待が感覚を裏切ったのだ。我慢しているうちにお湯が出てくれればいい。だが、結局、水しか出ないということもある。

逆に熱湯しか出ない、そういうホテルもある。これは危険だ。水のほうの栓を回して調節しようとするがうまくいかない。水か熱湯かの2択しかないのだ。そして、なんとか浴びられる温度にしようと調節しているうちに、熱湯が切れたのか、水しか出なくなる。

苦労して水を適温にし、心置きなくシャワーを浴びているときも気を許してはいけない。そうしたときは、きまってシャワーヘッドが頭の上に落ちてくる。