苦い文学

ワレワレハ日本人ダ

日本に巨大な宇宙船がやってきて、その主たちが姿を現した。

「ワレワレハ日本人ダ」

その生命体は、背が低く、メガネをかけて、歯並びが異常に悪かった。戦争の頃の欧米の風刺画に描かれた日本人そっくりだった。

その日本人たちは、私たちに即時降伏を求め、従わない場合は武力あるのみと脅した。

日本中は大騒ぎになった。歴史家たちは、戦争末期に宇宙に送られた日本兵がいたという史実を発掘し、本物の日本人だと太鼓判を押した。

世界各国はといえば、宇宙人の襲来かと緊張を高めていたが、これで日本の内政には干渉せずとの態度に落ち着くことになった。

日本は真っ二つに割れた。同じ日本人同士が戦うべきではないと主張する人もいれば、今の日本人は体格も良くなり、コンタクトレンズを使用し、歯科医療の恩恵に預かっているのだから、同じ日本人とはいえない、戦うべきだ、と主張する人もいた。

私たちは激しい議論を繰り広げたが、いつまで経っても結論は出なかった。そんな私たちに宇宙から来た日本人は業を煮やしたか、ある日、大胆な奇襲攻撃を仕掛けてきた。開戦は奇襲にかぎる、と思い込んでいるのだ。

私たちもやむなく武器を取り、ついに戦争が始まった。

しかし、連中ときたら、原爆を落とすこと落とすこと。広島も長崎も経験していないから、戦争は原爆にかぎる、と思っているのだ。

あまりの惨状に私たちはもう諦めムードだ。