苦い文学

携帯ショップ(3)

見ているうちに、バッテリーの残量が3パーセントから2パーセントに変わった。若者は、背負っていたリュックからモバイルバッテリーを取り出し、その携帯に接続した。

2人が戻ってくるまではもうわずかしかない。若者は焦るが、パッテリーの回復は遅い。3パーセント、4パーセント、5パーセント。ジリジリ待つうちにようやく10パーセント。それからゆっくり上がって13……16……19パーセント……あとちょっとで赤を脱し、緑色に……。

そのとき、奥のほうから声が聞こえた。若者はあわててバッテリーを取り外すと、ドアから外へと駆け出した。

どこをどう走ったか覚えていないが、夜の森の中でつまづき、転び、その拍子にかなりの高さを転落した。立ちあがろうともがいたが、足が動かない。助けを求めたが、その声は虚しく森に消えていくだけだった。

そして、身動きのできないまま、何日かが過ぎた。もはや声も出なかった。空腹と渇きと痛みのなか、若者は、結局は自分の運命を変えることはできなかったと悟った。

だが、そのとき、上のほうで人の声が聞こえた。

若者は最後の力を振り絞って叫んだ。

……生還したのち、若者は大容量の急速充電バッテリーを持っていくども山を歩き回ったが、二度とあの携帯ショップに出会うことはなかった。