ある時、北風と太陽がどちらが強いか口論をはじめた。「俺が強い」「いや俺のほうだ」 議論していても埒が開かないので、とうとう力比べで決着をつけることになった。
すると、たまたま日本人がやってくるのが見えた。北風と太陽は、どちらがこの日本人の上着を脱がせることができるか、という勝負をすることにした。
まずは、北風が名乗りをあげた。北風はビュービュー風を吹いて、日本人の上着を吹き飛ばそうとした。だが、冷たい風に当たった日本人はブルブルと震えながら、上着をギュッと押さえてしまった。
北風が失敗したさまを見て、太陽は笑いながら「私なら成功するだろう」と言って、日差しをぐんと強くした。日本人はあまりの暑さに汗をダラダラ流し始めた。そこで太陽は「あと一息だ」とさらに強力に照りつけた。
すると日本人は、上着の腰の両サイドに取り付けられた冷却ファンを回した。たちまち強力な風が上着内で循環し、こもった熱を吹き飛ばした。
日本人はエアコンさながらのひんやり感を味わいながら、涼しい顔でスタスタと歩き去っていった。