苦い文学

カツラと反戦活動

アナウンサー「ロシアがウクライナに侵攻してから、1年半が経とうとしています。あくまでも強硬な姿勢を崩さないプーチン大統領にはウクライナだけでなく、世界中の国々から非難の声が上がっています。実はその中には国内外のロシア人も多くいるんです。今回は日本に暮らすロシア人の反戦活動を取材しました。吉田六郎記者の報告です」(映像始まる)

ナレーター「ここは都内某所。カツラを箱に詰めているのはニコライ・チチコフさん。日本在住のロシア人です」

吉田記者「このカツラをどうするのですか?」

チチコフ「ロシアに送りますね」

ナレーター「チチコフさんがロシアにカツラを送り始めてもう1年が経ちます」

チチコフ「カツラはモスクワに送って、そこで仲間たちがもらって、プーチン大統領に被せます」

吉田記者「プーチン大統領に?」

チチコフ「そう。戦争を止めるために大事です。プーチン大統領は髪の毛なくなっちゃった。それで、なくなるの怖い。ウクライナもなくなりたくないから、戦争始めました。だから、カツラ被せれば、髪の毛とウクライナが戻ってきた思って、戦争やめます」

吉田記者「どうやってプーチン大統領にカツラを?」

チチコフ「それが一番大変ね。暗殺より難しい。だけど、向こうの仲間がんばってる。カツラ被せるチャンスきっと来ます。わたしたち、そのときのために活動がんばってます」(映像終わってスタジオに戻る)

アナウンサー「カツラで戦争を終わらせるとはなんとも奇抜なアイディアですね」

スタジオの吉田記者「ええ、そうなんです。この活動が実現するまで、チチコフさんは大変な苦労をされました。挫けそうになるたびに、ひいおじいさんのことを考えて自分を励ましていた、とおっしゃっていました」

アナウンサー「それはどうして?」

吉田記者「なんでも、チチコフさんのひいおじいさんは、ロシア革命時にレーニンにカツラを被せる活動をしていたそうです」

アナウンサー「チチコフさんの送ったカツラ、きっとプーチン大統領に届くでしょう。以上、吉田記者の報告でした。では、次のニュースです……」