苦い文学

スマホと人類史

2010年代、スマートフォンの普及により、街中や駅などの施設内でスマートフォンを操作しながら歩行する人類が出現した。これらの行為は「歩きスマホ」と呼ばれた。

「歩きスマホ」は多くの事故や犯罪の原因となった。それにともない「スマホ歩かれ」による被害者も増大した。

そこで、人類は「歩きスマホ」の弊害を乗り越えるべく、「スマホ歩き」の開発を進めた。その結果、2030年代になると、人類は「スマホ歩き」を徐々に身につけるにいたった。

「スマホ歩き」により、人類の歩行能力、歩行速度、歩行領域は格段に向上した。現在では、「スマホ歩き」は、人類史上、初期人類の直立歩行に次ぐ偉大な進化だとされている。

続く 100 年の間に、スマホ歩きは改良が進められた。22世紀半ばには完成に達し、スマホ歩きはここに全盛期を迎えることとなった。偉大なる「ホモ・スマホ・アムブランス(スマホ歩きするヒト)」の時代の到来である。

この時代になると、駅では「スマホを操作せずに歩くのは大変危険です」とアナウンスされるようになった。