苦い文学

蛙化現象

蛙化現象とは、恋愛障害のひとつで、近頃大きな話題となっている。

どんな障害かというと、片思いのうちはそれこそ恋焦がれて相手を崇拝せんばかりだが、一度相手が好意を向け出すと、たちまち熱が冷める、それどころか、相手が汚らわしく気持ち悪く思えてくるというものだ。

「蛙化」というのは、グリム童話の巻頭の「カエルの王さま」に由来している。「人なつこい美しい目をした王子」も「きたならしい、いやらしいかえる」になる、ということらしい。

童話ではカエルが王子になるのだから、逆で、辻褄が合わないように思える。だが、そもそも王子がカエルになったのは「悪者の魔女の魔法にかかって」いたためだというから、もしかしたら魔女の恋愛障害の結果、王子はカエルになってしまったのかもしれない。

「蛙化現象」という名称の問題はさておき、ネットニュースによれば、ある男性がこの現象を抑制する特効薬の開発に打ち込んでいるということだ。

その男性も蛙化現象にずいぶん悩まされたのだという。この現象を克服したいという思いが、彼の研究欲に火をつけたのだ。

この男性は、ニュースでこう呼びかけている。

「完成した暁には、僕のまわりの女性にはみんなこの薬を服用してほしい。そして、勇気を出して僕の胸に飛び込んできてほしい」と。