苦い文学

町の死角をあぶり出せ

アナウンサー「防犯カメラをあちこちに設置したにもかかわらず、犯罪が減少しない……そんな悩みを抱える地方自治体が増えています」

ゲスト「ええ、私たちのところにもずいぶん相談をいただいています」

アナウンサー「その原因とはいったいなんなんでしょうか」

ゲスト「いろいろありますが、私たちがもっとも重大だと考えるのは、町の死角の問題です」

アナウンサー「町の死角とは?」

ゲスト「町なかにあるにもかかわらず、誰にも気がつかれないスポットのことです。犯罪はこうした町の死角で起きるのですが、多くの場合、そこに防犯カメラが設置されていないのです」

アナウンサー「では、町の死角をカバーするように防犯カメラを設置するというのがいいのですね」

ゲスト「ですが、どこに町の死角があるかを特定するのが非常に難しいのです。死角というだけあって、普通の人には見つけることはできません」

アナウンサー「なるほど。では、いったいどのように見つけるのでしょうか」

ゲスト「私たちの方法をご紹介しましょう。映像をご覧ください」

(五百人ほどのみすぼらしい格好をした人々の群れが映し出される)

ゲスト「これはヘビースモーカーたちです。私たちは依頼のあった町に、筋金入りの喫煙者を連れてきて、放つのです」

(喫煙者たちが町中に散らばる。しばらくすると、人目につかないところでこそこそタバコを吸い始める)

アナウンサー「おや、タバコを吸いはじめましたね」

ゲスト「ええ、この町では喫煙所以外での喫煙は禁止されているのですが、私たちが町の喫煙所を閉鎖しているので、喫煙者たちは我慢ができず、隠れて吸い始めるのです」

アナウンサー「たしかにマナーの悪い喫煙者が思わぬところでこっそりタバコを吸っているのを見かけますね。非常に迷惑ですが……」

ゲスト「それが私たちの役に立つのです。これらの喫煙者がこっそりタバコを吸う場所こそが町の死角です。いわば喫煙者たちは町の死角発見の達人なのです」

アナウンサー「へー、思わぬ使い道があるものですね」

(町のあちこちの陰でタバコを吸う喫煙者たち。いっぽう、調査員たちが喫煙者に仕込まれた発信機をたよりに町の死角をマッピングしていく)

ゲスト「私たちはこのように喫煙者の動きを一日中追跡することによって、町の死角マップを完成させるのです」

アナウンサー「そのマップにもとづいて防犯カメラを設置すればよいということですね」

ゲスト「ええ、そうです。この町でも私たちのマップをもとに防犯体制を見直し、犯罪の減少につなげました」

アナウンサー「素晴らしいですね。ですが、調査の後、これらの喫煙者はどうするのでしょうか。このまま野放しにしていては危険ではないでしょうか」

ゲスト「ははは、じつに簡単ですよ。映像をご覧ください」

(調査員が町の広場に行き、アルミの灰皿を地面に放り投げる。わらわらと喫煙者が灰皿に集まってきたところを、投網で捕獲する)