苦い文学

たったひとつの変わらないもの

この世界に永遠の存在などあるのだろうか。時を超越し、過去も現在も未来も同一で、年もとらなければ、消滅すらしない存在が。

多くの人々がそうした存在を探すために貴重な人生を浪費した。だが、長い放浪のあげく出会ったのは、虚しくも「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」の一文のみ。

永遠を誓った愛も、死が分つのを待たずして離婚届を出し、真情を不滅に刻んだはずの刺青も寄る年波には勝たれず皺に覆われる。こんな世界ではそもそも永遠なる存在などありえないのだ。

だが、永遠に取り憑かれた探究者たちは、この考えを否定する。もしそうならば、人間とは万物流転の挽臼にすり潰されるだけの存在になってしまうではないか、と反論するのだ。人間はそれ以上のなにかだ、というのが彼らの見解だ。

「すでにこの世界に永遠の存在がいることは明らかなのだ。我々はもう見つけた。ただ、それに行き着く方法がわからないだけなのだ」

永遠の探究者たちは「これがその証拠だ」と、一枚の紙を見せる。その紙には「重要指名手配犯」と書かれ、何人かの顔写真が掲載されている。

「これらの人々を見たまえ。永遠に歳を取らないこれらの存在を。彼らはまさに過去・現在・未来を行き来する時の旅人。彼らこそ永遠の存在でなくてなんだろうか」