苦い文学

応援ソング

応援ソングというものはずっと以前からあったのかもしれないが、ひとつのジャンルとして確立したのは、というかより正確には「応援ソングを聞く」という行為が慣習として成立したのは、もしかしたら、ウォークマンが普及してからかもしれない。

というのも、ウォークマン(そして、現在のスマートフォン)がなければ、自分だけのものとして、そして、自分にとって応援が必要なまさにそのときに、応援ソングを流すということはできなかっただろうから。

競技前のアスリートがイヤホンで応援ソングを聞いて集中力を高める……テレビではお馴染みの光景だが、それも携帯音楽プレーヤーがあってはじめて成立することだ。

いずれにせよ、応援ソングというものが現代の音楽文化の重要な一角を占めており、どの歌手もたいてい少なくとも1曲や2曲の応援ソングを持っている。

こうした状況は、私のようなつらい人生を歩む者にとってはありがたいことだ。いつでも好きなときに、数えきれないほどの応援ソングが聞けるのだから。

それで、四六時中聞いていたせいか、最近、私は歩く必要すらもうなくなってしまった。

応援ソングが背中を押してくれるので、ひとりでに前進してしまうのだ。応援ソングの意外な効用といえるだろう。