苦い文学

線審

混迷するこれからの世界でますます需要が高まる職業といえば、線審だろう。

線審とは、ボールが線から出たかどうか判定するプロフェッショナルだ。野球やテニス、サッカーでお馴染みだが、その活躍の場はフィールド外に広がりつつある。

たとえば EEZ(排他的経済水域)だ。北朝鮮のミサイルが、EEZ の外であろうと内であろうと、はっきりとわかる位置に落下すれば問題はない。だが、EEZ ラインのギリギリを攻めてきた場合はどうだろうか。線審の判定が必要なのは言うまでもない。

また、つい先日、岸田首相を狙った爆発物投げ込み事件が起きた。今後、同様な事件が増えそうな気配であるが、警備体制の強化とともに、線審の立ち合いも不可欠だ。

あっ、首相の街頭演説の最中、聴衆のだれかが筒状の物体を投げ込んだぞ!

「あぶない!」 SPたちがとっさに首相を庇う。と同時に線審が鋭い目つきで物体の落下地点を確認する。線を越えたか、越えないか?

旗が上がる! 「アウトッ」

警官たちはいっせいにテロリストにつかみかかる!