苦い文学

最後のおやじギャグ

おやじギャグというのはいうまでもなく、高齢男性が言いがちな「つまらない駄洒落」のことだが、現代では「加齢による言語連想機能障害」と呼ばれている(DSM-5による分類)。

この原因については、かねてから脳の老化との関連性が指摘されており、さまざまな研究が行われている。

最近発表された研究では、おやじギャグをいうグループ(OG)と言わないグループ(NOG)の脳の器質的特徴の比較が行われ、OG群では、ニューロンレベルでの脳の硬直インデックス(CSI)が有意に高いとの結果が出たそうだ。

よく知られているように CSI はまた死後硬直の基準指数でもあるから、おやじギャグとは、実は死後硬直の前駆症状なのではないか、という興味深い推論もなされている。

私にはこの推定の当否を判定するだけの材料はないが、おやじギャグが死後硬直の始まりであるならば、その終着点である死後のもっともカチンコチンの状態は、まさしく全身がおやじギャグといえそうだ。

生涯最後のおやじギャグを、思い思いのこわばりぶりで披露する死体たちを見れば、もっともおやじギャグを軽蔑する最先端のお笑い愛好家も、腹を抱えて大笑いせずにはいられないのではあるまいか。