初めに発見したのは北朝鮮の科学者たちとも言われているが、いずれにせよ、人類は、異空間への入り口の存在を突き止めたのだった。
しかも、一度それが発見されるや、世界中のあちこちにもその入り口があることが明らかになった。慎重な調査ののち、各地で探査隊が送り出された。
探査隊がもたらした情報は驚くべきものだった。それらの入り口は別世界に通じていたのだ。
しかも、それらの世界には人間の居住できる空間が広がり、さらにその世界が別の世界へと繋がっていた。つまり、人類は突然、自分たちが異世界ネットワークの一部であることを悟ったのだ。
それから500年の間、つまり、瞬く間に人類は異世界へと広がっていった。というのも、それらの世界は、地球よりも豊かで安全であり、さらには地球に存在しないエネルギーで満ちていたからである。
いまや、人類は無数の世界に居住し、世界をつなぐネットワークを通じて膨大な人とモノが行き来していた。
そして、この空前絶後の繁栄のさなか、急に異世界をつなぐ経路が消失した。ちょうどこの経路の発見から1000年後のことだった。
ネットワークは分断され、地球と異世界は交信不可能となった。
「異世界移動システムの無料お試し期間が終了したのではないか」というのが、みすぼらしい地球にとり残された人類の意見だ。