古代ギリシアの哲学者、プラトンによれば、私たちのこの世界は、真の実在であるイデアの似姿に過ぎないのだという。
つまり、この世界の愛とか善といったものは、イデア界にある本物の愛や善の似姿なのだ。そして、似姿だからこそ、不完全なものでしかない。
プラトンに言わせれば、この不完全な似姿を脱して、真の姿へと向かうことが、哲学という営みなのである。だが、別の哲学者はこの考え方を無意味だとして、退けたという。
その哲学者はこう反論した。
「むしろ、イデア界に存在するさまざまな真の実在が、より完全に近い形で私たちの世界に届くようにするのが哲学者の仕事ではないだろうか。できるかぎり本物に近ければ、私たちの哲学生活は大きく変わるはずだ」
そこで、この哲学者は、イデアをロスレスでこの世界に送信する装置を考案し、さらに通信するデータ量が著しく増加することも考慮して、お得な通信プランの提供も始めたという。詳しくは、ディオゲネス・ラエルティオスを参照されたい。