今日から私はマスクなしで外に出ることにした。もうマスク生活とはおさらばだ。
商店街を堂々と歩く。人々はまだマスクをつけている。同調圧力とはなんと哀しいものではないか。
私はふと視線を感じた。目をやると、マスクをつけた男が険しい顔で私を見つめている。さてはマスク警察か? だが、よく見るとそれはショーウィンドーに映った私だった。いつのまにマスクを! 私はマスクを外すと再び歩き出した。
眼鏡屋に入った。似合いそうなメガネを選びだし、試着して鏡を覗き込んだ。ああ! またマスクをしているではないか! 私はマスクを慌てて外し、再び鏡を見た。だが、まだマスクが鼻と口を覆っている!
「ああ、ああ!」 私はマスクを剥ぎ取った。するとその下に新たなマスクが現れた。取っても取っても際限なくマスクが現れた。
「おおおお」 私の足元はたちまちマスクだらけになった。狂ったようにマスクを外し続ける私は、やがてへたり込んだ。店員が駆け寄ってきた。「お客様、どうされました?」
私は我に帰る。見回すとマスクなどない。どこにもない。「いえ、ちょっと……大丈夫です」と私は立ち上がり、店を去った。
どうやら、長いマスク生活から急にマスクなしに変えたため、ショック状態に陥ったものらしい。急性マスク障害だという。ひどい場合には、混乱して顔中をかきむしり、血まみれになることもある。
人々がマスクをつけていたのは、同調圧力などではなく、急性マスク障害の予防のためであった。私も今では少しずつ体を慣らす毎日で、いつかマスクなしで暮らせる日を夢見ている。