苦い文学

死者の恐れ

墓石の話をしたばかりだが、先日、石材屋さんからショッキングな話を聞いた。

墓石に水をかけてはいけないというのだ。墓石にダメージを与え、ヒビが入ってしまうからだという。

私たちは、墓石の上から水をかけるものと教えられてきた。「お水をかけると故人が気持ちいいと言っている」などと言われて、いい気になってじゃぶじゃぶかけてきたのだ。

それを今になって墓石に水をかけるとダメとはどういうことだろうか。「もし水をかけたいのなら、墓石の下の水鉢に注ぐ程度で……」じゃないのだ。墓に水なんかいらなかった。

だが、それにしても、どうしてご先祖さまはこのことを教えてくれなかったのだろうか? 

「水をかけてくれるな」とか「頭が割れるように痛い」とか枕元で告げ知らせてくれたって良さそうなものだのに、そんな話聞いたことがない。これは怠慢ではなかろうか。

いや、もしかしたら、肝を冷やしているのかもしれない。墓石というものができて以来、私たちがかけてきた水の量、水汲みの労力、手桶と柄杓の運搬の手間のすべてが実は無駄だったのいうのがバレたらまずい、と。

損害賠償でも請求されたらコトだ、と背筋が凍る思いでいる可能性もある。だから、ダンマリを決め込んでいるのだ。

都合が悪くなると、死人に口なしのフリをしだすとは、なんとも呆れた話ではないか。