苦い文学

墓の見守り

私たち日本人にとって、墓はとても大切なものだ。季節ごとの墓参りは欠かせないし、いつだって墓の状態を最良に保たねばならない。なぜなら、墓の状態の良し悪しは、家族の幸運や健康に直結する大問題だからだ。

そこで、私たち日本人は墓に何かがあるとすぐわかるような仕組みを作り上げた。

たとえば、墓の手入れがしてなくて、草がぼうぼうに伸びている。これは家族の不運を予想させる由々しき事態だが、心配はいらない。すぐに夢のお告げで異常発生の通知が来るようになっているのだ。

あるいは、嵐が過ぎ去った後なんかによくあるが、墓石の上に折れた枝なんかが乗っかっている。

するとただちにご先祖さまが枕元に立つ。何にも言わないが、様子でわかる。苦しそうで、鬱陶しそうだ。起きたらすぐに墓に駆けつけて、枝を取り除く、ということになる。

この墓の見守りは、トゥームセキュリティ(tomb security)と呼ばれる。私たち日本人は、それこそ SECOM とか ALSOK とかの生まれる以前から、墓の安全監視システムを構築してきたのだ。

いや、むしろ SECOM も ALSOK も、墓の見守りからホームセキュリティを思いついた、というべきではなかろうか。