苦い文学

浦島太郎の夢

浦島太郎は心やさしい漁師だった。

あるとき浜辺を歩いていると、子どもたちが亀をいじめているのを目にした。

「こらこら、むやみに生き物をいじめてはいけないよ」と子どもたちにお金を払い、亀を海に逃してやった。

このできごとがきっかけとなって浦島太郎は動物愛護について深く考えるようになった。いかにこの世には動物虐待が、飼育崩壊が溢れていることか。苦しめられている動物たちを見ると、まるで世界が泣いているように感じられるのだった。

やがて彼は街頭に立ち、保護犬や保護猫、保護亀のことを訴えるようになった。

浦島太郎のもとにはしだいにその思想に共鳴するものたちが集ってきた。彼の運動のために、寄付金を募ったり、パンフレットを配ったり、後援会の運営をしたりして駆け回っているのは、かつて亀をいじめていた子どもたちだった。

こうして浦島太郎は動物愛護に生涯を捧げたのであった。

さて、彼が死ぬとき、一匹の亀が現れたと伝えられている。その亀はかつて自分を助けてくれた礼を述べると、浦島太郎の目の前で不思議な箱を開けた。

たちまち遠い未来の風景が広がった。そこでは人々は動物たちをまるで友人のようにやさしく扱っていた。人間どうしの殺し合いも、戦争もないのだった。

人生をかけた自分の夢がいつか実現するのを確信して、浦島太郎は安らかに息を引き取った。