苦い文学

この世のインバウンド

この世の通貨は生、あの世の通貨は死です。どういうことかと言いますと、この世でものを買うには生を使い、あの世では死を使うということです。

ですので、この世の鬼があの世を旅行するときには生を死に両替する必要が生じます。なぜなら、あの世の滞在費は死で支払わなければならないからです。あの世の鬼がこの世にやってくるときも同様です。

その際に問題となるのが、生と死の交換比率、つまり為替相場です。

この交換比率はいつも同じではありません。100生が100死ということはあまりなく、たとえば100生が130死の生高死安だったり、その逆の100生が70死といった生安死高だったりと絶えず変動しています。

生死の相場は、最近では生安死高に落ち着きつつあります。この世の鬼にとってはあの世旅行は高くつくものとなり、あの世への旅行者数も減ってきています。

ですが、逆に、この世を訪問するあの世の鬼が増加しているのです。そこで、この世の鬼はインバウンド需要を当てこんで、あの世の鬼のニーズに合わせたサービスを幅広く提供することとなりました。

私たち人間の住む世界が、だんだんと地獄のようになっているのはこんな理由からなのです。