苦い文学

マージナル

「レアなものはたくさんあるものよりも価値が高い。トレーディングカードでも、食材でも、金属でも、なんでもそうだ。だが、人間に当てはめると不思議とそうではなくなってしまう。たとえば、不法滞在者はそうじゃない人々に比べてはるかに数が少ないが、だれもこれらの人々を価値があるとは思っていない。むしろ侮蔑と嫌悪の対象として、日本社会のはじっこに追いやっている。

「だが、見方を変えれば、不法滞在者はむしろ日本の中心なのだ。なぜなら、不法滞在者は日本社会の歪みについて我々に直に教えてくれるからだ。これは多数派には絶対にできないことだ。

「不法滞在者の例を挙げたが、実はなんでもそうなのだ。この社会からのけものにされ、批判されるばかりの人々、ホームレスでも、回転寿司で迷惑行為をした若者でもなんでも、これらの人々は我々の社会についてより重要なことを教えてくれるという意味で、はじっこどころか、社会の中心にいるのだ。

「そうなのだ。はしと思えたものが、実は真ん中なのであり、真ん中と見えたものが、実ははしに過ぎなかったのだ。

「そこでもう一度問おう。お前はいったい、それで問題が解決したとでも思っているのかね」

と、桔梗屋は、橋の真ん中を渡ったばかりの一休さんに負け惜しみを言いました。