苦い文学

マスコミの報じない真実

市役所の地域ボランティア掲示板に行ったら「マスコミの報じない真実を暴く会」という団体があった。

毎週日曜日早朝に中央公園に集合とある。さっそく行ってみることにした。

集合場所には8名ほどの人が集まっていた。リーダーと思しき人が大きな袋を持って立っていたので、話しかけると、快く参加を認めてくれた。

リーダーは時間になるとみんなの前で話し始めた。「皆さん! この世界は嘘ばかりです。絶対にマスコミの言うことなどを信じてはいけません! 今日もマスコミの報じない真実を暴いてやりましょう!」

参加者たちは「おー!」と意気軒昂だ。リーダーは持っている袋から、長いトングとビニール袋を取り出すと参加者たちに配った。

「さあ! 始めましょう!」

人々は公園のあちこちに散らばっていった。いきなりトングを持たされてオタオタしているとリーダーがやってきた。

「マスコミの報じない真実を暴いてください!」

「でも、どうすれば……」

「ほら、あそこにありますよ!」とリーダーは植え込みの中に落ちている紙屑を指差した。私はトングで拾って袋に入れた。

「そうです。あっ、こちらにも!」

転がっている空き缶を私は拾った。「そうそう、その調子です」

「ずいぶんあるんですね」

「ええ、まったくひどい偏向報道ですよ。マスコミときたら捏造ばかりですからね!」

私は草むらに犬の糞が落ちているのに気がついた。「先生! これももしかしたらマスコミの報じない真実でしょうか」

リーダーはかがんで犬の糞をじっくり見た。「いや、違います。これは学校では教えてくれない真実ですね」

「はっ、かしこまりました。では、こちらは?」と私は路面に撒き散らされた吐瀉物を指した。

「ああ!」とリーダー。「これは日本人が知らない真実です」

「ははあ、難しいですね」

「いえいえ、そんなことはありません。どれも一緒ですよ!」とリーダーは笑った。

およそ1時間後、マスコミの報じない真実を大量に暴いた私たちは、偏向マスゴミに対する怒りを新たにして意気揚々と帰宅したのだった。