苦い文学

生首寿司

近頃、世間で問題になっているいわゆる「寿司テロ」は、やるほうが悪いのはもちろんだとしても、人件費削減、店舗大型化、経営合理化による「客の人格軽視」にも原因があろう。

提供するほうが客などいないかのようにふるまいたがるのだから、「なにしてもいいのだ」と思う客も出てこようというものだ。

とはいっても、昔のようなこぢんまりとした寿司屋に戻ることはできないだろうから、もう、回転レーンに生首を乗せて巡回させるほかないのではないか。

人間はやはり人の目を気にするものだから、これは効果的だ。

生首は本物でもいいのだが、経費もバカにならない。だから、SiriとかAlexaとかの生首版でもいい。目がキョロキョロと客を見つめるようになっている。というか客から目を離さない。近づくあたりから始まって、遠ざかって向きを変えるぎりぎりまでじーっと睨んでるのだ。カメラが仕込まれているのはいうまでもない。

寿司をどうやって取るかというと、客に近づくと口を大きく開ける。舌の上に寿司とか味噌汁とかが乗せられている。客が取るときに、舌が指をペロペロッと舐めるのはちょっとした警告だ。

《わかってるだろうな、やるなよ》

だが、真に受ける必要はない。その証拠に生首がウィンクしている。意外に愛嬌たっぷりなのだ。

注文だって簡単だ。生首に向かってこう言うだけだ。

「Hey Taisho、マグロとハマチと茶碗蒸しとパフェ、お願い」

「はい、マグロとハマチと茶碗蒸しとパフェをシャッフル再生します」と口をもごもごしだす。

なにが出てくるか知れたもんじゃないが……