苦い文学

調剤薬局

この世で一番、ハラハラさせられる場所は、調剤薬局ではないだろうか。

もっとも、昔はそうではなかった。処方箋を渡して、待っていれば薬をもらえたのだ。

でも、今は違う。薬がもらえるかどうか、ヒヤヒヤしなくてはならない。もちろん、薬は絶対にもらえる。だが、薬局の人は、あの手この手で私たちを不安にさせるのだ。

まず、お薬手帳だ。これは薬物の王国に入るためのパスポートだ。これを忘れた病人は、のちのち薬の名前の書かれたシールを額に貼られて追放されることとなる。

そして、処方箋を出してからの待ち時間がいかに精神をむしばむかについては何も言うまい。瞑想と反省あるのみだ。

さて、ようやく薬局の人が私たちをカウンターに呼ぶ。薬の準備ができたのだ。

「以前と同じお薬ですね。どうです。だいぶ良くなりましたか」

これだ、これにどう答えるか。私たちは悩みに悩んだすえ、答える。

「ええ、おかげさまで」

「ではもう薬はいりませんね」 こう来かねないのだ。では、逆ならどうだろうか。

「以前と同じお薬ですね。どうです。だいぶ良くなりましたか」

「まだちょっと……」

「あら。じゃあ、この薬はやめときましょう」

繰り返すが、薬は絶対にもらえる。だが、それまでに私たちはいくつもの試練を乗り越えなくてはならない。一刻も早く家に帰って寝たい病人にとってはつらい。

しかも、薬が手渡されても安心してはいけない。うっかり喜んだりしたら、これは詐病に違いないと、パッと取り上げられる。つらそうにしててもおんなじだ。やっぱり取り上げられる。つらそうにしながら、足取りの軽やかさで微調整しつつドアに向かうのがいいだろう。

そんなこんなで、薬局を出たときには、もっと病人になっている。