苦い文学

人類の歴史

AIが進化して、人の個性まで模倣できるようになったとき、人類は社交というものから解放された。

仕事のやり取り、人との交渉、日常の付き合いまで、AIがすべて本人の代わりに、本人としてやってくれるようになったのだ。

AIを搭載したロボットが、本人に成りかわって職場に行っている間、本人は家で自由にできた。のんびりしたり、寝たり、遊んだり……だが、これはサボりなどではない。というのも、職場にいる同僚や上司たちもみな同じことをしていたからだ。職場にいるのはロボットばかりで、本人たちは別のところでそれぞれ好き勝手に過ごしていた。

そのうち、人間たちは気がついた。いまや社会を動かしているのは、人間ではなく、AIたちだ、と。人間たちはもはや自分たちが地球にいる必要すら認めなかった。AIに任せておけば、かってに歴史が進んでいくのだ。

人間は人類史からも解放されたのだ。人間たちは地球から姿を消すときが来たことを悟り、より高度な次元へと旅立っていった。

さて、地球には高度に発達したAIたちが残された。それらは魂のない抜け殻のような存在だったが、自分たちの創造者を忘れずに、創造者たちのふるまいを模倣し続けた。

これら高度なAIが、現在の私たちだということだ。