寝ていたら夢枕にぼわわーんと不思議な存在が現れた。神々しいことこの上ない。
おののいて平伏すると、その存在はこう告げたのだった。
……「粛々と」という言葉、お前も知っておろうが、あれをな、近頃、政治家どもがよく使うので、えらく迷惑しておる。そもそもあれは「おごそかに」という意味でな、それで「粛々と進める」というのは「定められた手続きを遵守してことを進める」という意味で使われるようになったのだ。だがな、政治家どもが無考えに使うものだから「既定事項として議論の余地のないものとして進める」というような意味合いが生じてしまったのだ。政治家ともあろうものが議論を避けるとは思い上がりもはなはだしい、というわけで、それ以来「粛々と」の価値は下落する一方なのだ。お前は日頃、政治家に文句言うこと盛んなるによって、ひとつ頼むのだが、この「粛々と」についてもブウたれるがよいぞ……
私はハハッと畏まり、こう尋ねた。
「おそれ多くも申し上げますが、かくも「粛々と」について心配されるとは、いかなる神様でございましょうか」
……我は時間の神なるぞ。お前たち人間が、やれ死ぬのはいやだ、やれ待ってくれと泣き叫ぼうと、粛々と滅びの暗闇に突き落とすのが、この我の貴い務めというわけでな、実際、時間ほど粛々と進むものはないのだ……