苦い文学

くしゃみ

「くしゃみ(くさめ、くっさめ)」の語源が「くそはめ」だというのはよく知られている。「ハックション」や「クシュン」などはいかにも「くしゃみ」の音のようだが、実際には「くそはめ」から派生したものであろう。

「くそはめ」というのは「糞喰め」のことで、現代語で言うならば「クソくらえ」となる。

これは「くしゃみ」をしたときに唱える魔除けのまじないで、「クソくらえ」といって災いを追い払ったのだと考えられている。

こうした風習は日本だけでなく、世界中に見られる。英語圏では、くしゃみをした人に「(God) bless you!」といって神の加護を求めたり、フランス語では「à vos souhaits!(あなたの望みが叶いますように!)」と祈ったりする。

医療の発達していなかった昔は、風邪が悪化して亡くなったということもあったにちがいない。風邪の初期症状であるくしゃみが気がかりな兆候ととらえられたのは無理もなかろう。

しかし、現在では、くしゃみはそれほど重大なものではない。花粉症だってある。もはや、くしゃみを引き起こす「くしゃみ神」を罵って追い払う時代ではないのだ。

むしろ、コロナを経た今では、電車の中とかで平気でデカいくしゃみをする人そのものを、「クソくらえ」と罵りたい気分だ。