苦い文学

プリン

先日、二人の人とお昼を食べた。

私にとっては二人は最近の知り合いだが、その二人どうしは長いつきあいのようだった。

三人で話していて、私の知らないある店の話題になった。どうやらシフォンケーキの店のことのようで、二人は行ったことがあるらしい。

その店は、シフォンケーキだけでなく、プリンも売っていた。二人がいうには、それには理由がある。つまり、シフォンケーキを作るには卵白が大量に必要だが、それでは黄身が余ってしまう。それで黄身を使うためにプリンも作っているのだという。

問題はそのプリンだ。「高いわりに、味は普通」なのだ。

二人の話を聞いていた私はこう口を挟もうとした。

「プリンを買う人なんてのは、高かろうが不味かろうが、なんでもいいんですよ。バカだから」

もちろん冗談だが、誤解されそうにも感じたので、結局言うのはやめた。

それから話題が移り、銭湯の話になった。

「この辺りにはいくつも銭湯がありますね」と私が言うと、一人が、最近、銭湯がひとつ潰れたことを教えてくれ、こうつけ加えた。

「その銭湯は、さっき話していたシフォンケーキの店の近くにある銭湯ですよ」

私はわかった。それは、私がプリンをよく買う店だった。