かの勇猛なるバーシーは長い夢を見ていた。
漠として見定めがたい世界を彷徨っていたのだ。その世界で、彼は紫色の霧に包まれた一人の男に出会った。
男の肌は暗く、顔は険しかった。初めて会ったように思ったが、男は彼のことを知っていた。
「バーシー、待っていたぞ。君に預かっている曲があるんだ」
「なんの曲を?」とバーシーが聞き返すと、男は抱えていたエレキギターを弾いて歌い出した。
Hey Joe, where you goin’ with that gun of yours?
(ヘイ・ジョー、自分の銃を持ってどこに行くんだ)
Hey Joe, I said where you goin’ with that gun in your hand
(ヘイ・ジョー、自分の銃を持ってどこに行こうってんだ)
男はギターを激しく弾き鳴らしながら、歌い続けた。次第にバーシーの頭の中で何かが形作られていった。
「Hey Joe……Hey Joe……ヘイ・ジョー……ヘイジョー……へいじょう……へいじょう……平壌……平壌……」
男のギターから炎が生まれ出て、男を、世界を瞬く間に焼き尽くした……。
バーシーは目を覚ました。
彼は光に包まれた部屋に寝かされていた。白衣の男たちが忙しげに動いている。
体を動かそうとしたが、力が抜けてピクリともしなかった。助けを求めて声を出そうとしたが、舌が痺れていた。
男たちは黒い物体を持ち上げ、バーシーの頭を手で押さえた。バーシーの目が恐怖に見開かれる。そして、男たちがそれを被せた瞬間、バーシーの頭蓋骨の中で無数の光が爆発した……。