苦い文学

覚醒する飛翔体(3)

右翼の大物政治家、丸角権蔵の秘書、笹木田美那は、その朝、関連団体から上がってきた資料に困惑していた。バーシーが議会へ華々しく登場する数時間前のことだ。

情報を提供した団体は、表向きは北朝鮮の人権問題を扱っていたが、裏では北朝鮮のスパイとこれに内通する政府関係者の炙り出しを任務としていた。

だが、「極秘」と記されたその資料はなんとも不可解な代物だった。それは二つのファイルからなっていた。ひとつは「ここ1ヶ月の北朝鮮のミサイルの発射状況」と題されたものだった。もっとも、これはすでに公にされた情報で、機密でもなんでもなかった。

問題はもう一つのファイルだ。これが機密情報なのに違いなかったが、何を意味しているのか、彼女にはまったくわからなかった。

それは、全国会議員のリストだった。

ざっと目を通した彼女は、そのうちおよそ二〇人ほどの議員に丸印がつけられているのを確認した。これら印づけられた議員の横の欄には、日付と時間、奇妙な数字の羅列がいくつも記されていた。

これはいったい何を意味するのか? これらの議員がもし北朝鮮のスパイだとしたら……彼女は恐ろしさに身を震わせた。