苦い文学

With コロナ

政府によれば「With コロナ時代」がやってきたという。

新型コロナウイルスとの併存を前提とした新たなライフスタイルへと転換すべきだというのだ。

「コロナとの併存」とは一体どういうことなのか。私には具体的にイメージできなかったが、ミスター・Withコロナという人の講演会が近所の市民会館で開催されるというので行ってみた。

会場となったホールは人でいっぱいだった。そして、いかにもというべきか、誰もマスクをしていなかった。私も外したらなんだか気が楽になった。

やがて、一人の男が舞台の上に姿を現した。会場に拍手が鳴り響く。どうやらこれがミスター・Withコロナのようだ。彼はイガグリ頭の人形を抱えていた。

「ねえ、コロナ! 今日もずいぶんお客さんが来ているよ!」 男は人形に話しかけた。すると人形は「ソウダネ! ミンナ、ヨウコソ! 僕、コロナ! イツモ一緒ダヨ!」と口をカタカタと動かした。

それから始まったのは、歌ありマジックありコントありの愉快な腹話術ショー。どれも楽しかったが、もっとも印象に残っているのは、アンコールでコロナくんが U2 の「With or Without you」を熱唱したことだ。

会場は感動とコロナに包まれ、私は翌日からさっそく陽性となった。