苦い文学

透明人間

ロシアがウクライナに侵攻して以来、私たちはテロしかないという考えで一致した。

つまり、この戦争を終わらせるにはプーチンを暗殺するほかないのだ。

だが、どうやって? 私たちが達した結論は、透明人間だった。そう、透明になって、クレムリンの最奥部に侵入し、そこでプーチンを密かに殺害するのだ。

そして、この数ヶ月の間、私たちは莫大な資金と労力を開発に注ぎ込み、ついに、透明人間化に成功したのだった。

プーチン暗殺という歴史的かつ英雄的作戦にあたるのは、私たちの中でもっとも体力と地力・忍耐力に優れた男だ。私たちは彼に「キエール」(5mg)を投与した。

徐々に、彼は消えだした。足が消え、手が消え、そして胴体が徐々に……。消滅が首から上に及んだとき、それまで冷静沈着だった彼の顔が驚きに歪む。と、その瞬間、すべてが消えた。彼は私たちには見えない世界へと消え去ったのだ。

それから数週間経った。プーチンは死んでなくてはならず、また戦争は終わっていなくてはならなかったが、なんの変化も起きなかった。

そして、今日、彼が帰ってきた。私たちの前に姿を現したのだ。

開口一番いうには「密かにプーチンを狙うなんてムリムリ! クレムリンの前は透明人間の人だかりで押し合いへし合いで!」

なんでも、実はこの世は透明人間の人口のほうが多いくらいだとか。