昨日靴紐のことを書いたが、それは靴紐が自ずとほどける神秘の現象について、社会の関心を惹起せんと試みたものであった。
それで私の目的は達成されたかに見えたのだが、今日、あらためて紐靴を履いて外出してみて、まだまだ惹起し足りぬの念が強くなった。それでこの現象について3点ほどの補足をしたい。
1.歩いていると、紐靴の紐が緩んできているように感じることがある。この時に、立ち止まって結び直したり、輪を引っ張って結び目をきつくしたりしてはいけない。そうすると、数歩のうちに必ずほどけてしまうだろう。触らなければ決してほどけなかったのだ。
2.緩くなっていると感じていない時には、なおさら結び目を触ってはいけない。そうすると、数歩のうちに必ずほどけてしまうだろう。
3.片方の紐靴はしっかり結ばれているのに、もう片方は緩くなっていると感じることがある。歩くと気になってくるが、こういう時も直そうとしてはいけない。もし、緩くなっているほうを結び直したりすれば、数歩のうちに、しっかり結ばれているほうが必ずほどけてしまうだろう。
ああ、靴紐よ、これら神秘の現象よ。私たちは、お前たちを通じて、自分たちが所詮は「靴紐を結ぶ値打ちもない」存在であることを思い知らされるのだ。