苦い文学

六文銭

「死んで、それから、私は三途の川にやってきました」と彼は流暢な日本語で語った。

「渡し賃にと六文銭をあらかじめ持っていたのですが、実はそれでは足りなくて。

というのも、裕福な中国人たちが冥土の土産を爆買いして、船を派手に借り切って運ぶのです。それで、我々にはもう手の届かないくらい値上がりしていました。河原の奪衣婆だって私たちには見向きもしません。あれが奪うのはいまやシャネルやエルメスだけです。

お金が足りなくて川の向こうに行けない亡者がどうなるかというと、鬼たちがやってきます。捕まえて、難民キャンプに放り込むのです。ええ、川から少し離れたところにあって、竹でできた粗末な小屋がひしめいている区域です。

難民キャンプの暮らしは大変です。お金もないですし、配られる食料もわずかです。キャンプの外にこっそり日雇い農作業に出たりして、なんとか現金を手に入れようとするのですが、これは危険ですし、本当に大変でした。

しかも、鬼たちが定期的にキャンプにやってきて、難民たちが立てた家を壊して回るのです。もちろん、粗末な小屋なので建てるのは大変ではありませんが……。

そんな生活がどれくらい続いたかわかりませんが、私はお金を稼ぎ、キャンプ内で商売を始め、それなりの蓄えができました。そのお金をブローカーに支払って、日本のビザと航空券を手に入れ、なんとか日本にたどり着きました。ですが、成田空港で上陸を拒否されて、ここに収容されてしまいました」

「それで、難民申請をしたいということなのですね」と私がいうと、面会室のアクリル板の向こうで、死者はうむとうなずいた。