苦い文学

バカなおじさんの伝言

安倍晋三元首相が殺されたとき、バカなおじさんは大いに悲しんだ。彼は熱烈な支持者だったのだ。

早すぎる死が悔しくてたまらなかった。安倍元首相こそはまた首相になって日本を取りもどしてくれる人だと、バカなおじさんは考えていた。

増上寺で葬儀が行われると聞いたバカなおじさんは、他の支持者たちとともに、葬儀会場近くに集まった。

葬儀が終わって、安倍元首相の棺を乗せた車が出てきた。これから斎場に向かうのだ。

多くの支持者と一緒に並んでいたバカなおじさんは、車が目の前を通過したとき、大声で何かを叫んだ。

すると、車が急停止し、棺が転がり落ちた。次の瞬間、中から安倍元首相が出てきた。

いつもの笑顔で支持者に手を振ると、生き返った安倍元首相は急ぎ足で立ち去った。支持者たちは歓声を上げて後を追った。

この驚くべき光景を見た支持者がバカなおじさんに尋ねた。

「よみがえったのは、まさにあなたが声をかけたからです。いったい、何と言ったのです」

バカなおじさんは満面の喜びを浮かべて答えた。

「マザームーンがお呼びですよ、と伝えたのです」