苦い文学

バカなおじさんの後悔

バカなおじさんが泣き叫んでいた。

自分の頭をぽかぽかと殴り、地べたを転げ回ったかと思うと、天を見上げて、恨みとも呪いともつかぬ言葉を撒き散らした。

見かねた人が、バカなおじさんに尋ねた。

「どうして、そのように嘆いているのですか。後悔先に立たずというように、起きてしまったことはしかたがないのです」

バカなおじさんは涙ながらに答えた。

「ああ、いつの頃からか、私は虚しさを感じるようになったのです。心にポッカリと空虚な穴ができたようで、ご飯を何杯お代わりしても、何時間も寝ても、その穴は埋まりませんでした」

「人間だれしもそういう思いをすることはあります」

「しかも、私の心の中のその空虚な穴は、年を経るに連れてどんどん広がっていくではありませんか。そして、いまやもう東京ドーム10個分……」

そう言いながら、バカなおじさんは嗚咽を漏らし、自分の頭を叩きはじめた。

「どうしたのです、やめてください!」

「これが後悔せずにいられましょうか! 私の心の中に広がる、漠々たる空虚をハロウィーンの会場に使ってもらっていたら、あんなことには決して……!」