先日都内で信号を待っていたら、デモ隊に出くわした。
「ヘイトスピーチを許すな!」とか「女性も男性も平等だ!」とか「外国人に対する偏見をなくそう!」とか、さまざまな差別に反対するスローガンを掲げて、道を行進していた。
私が興味を感じたのは、犬を連れたデモ参加者が何人かいたことだった。
私も何度もデモに参加しているが、犬と一緒というのは見たことがなかった。これら愛犬家たちは反差別と動物愛護を訴えていたのだった。
信号が青に変わり、警察がデモ隊を止めた。犬を連れたデモ参加者たちはちょうど私の前で立ち止まった。
私は道を渡ろうとしたが、そのとき、犬たちが吠えはじめた。
反差別デモに参加するような殊勝な犬たちがどんなことを言っているのか知りたくなって、私は足をとどめて、耳を傾けた。
犬たちは口々に次のようなことを主張していたのだった。
「保護犬特権を許すな!」
「普通の犬に対する逆差別をやめろ!」
「保護犬を処分しろ!」
私は、これらの犬たちの考えと飼い主の考えとのはなはだしい乖離に驚いたが、もしかしたら、自然というものはこのようにバランスをとっているのかもしれないと、神妙な気持ちになった。